Hello,僕の初恋



「左手の指も三本、折れてるってさ」



私の顔を見ながら、ノゾムくんがそう言う。

彼の声も少しだけ震えている気がした。



左手の指、三本。

彼の左手の、人差し指から薬指までが固定されているのが目に入る。



ベースの弦を押さえるのは、左手の親指を除いた、四本の指だ。

そのうちの三本が折れてしまっている。



それが彼にとってどんなに辛いことか、想像するだけで胸が痛くなった。



文化祭のステージを思い出す。

それから続けて、先日のクリスマスライブの光景も思い出した。

今も瞼に焼き付いて離れない、彼の演奏。曲。リズム。



緑色に光る楽器のボディと、そこから伸びる四本の弦を、巧みに操る長い指。


少し茶色がかった、私と同じゆるいくせっ毛。


弧を描くやさしい幅広の二重まぶた。すっとした鼻。


袖まくりした色白の腕と、似合わない筋肉。


その人の周りだけ、虹色に光っているように見えた。





あの光景を私は一生忘れない。そう思った。





「……ベース、弾けるんだよね?」





恐る恐る、言葉を口にする。

ノゾムくんは困ったような顔をして、小さく零した。
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