Hello,僕の初恋
ロックンロールが踊る
校内放送の機械から、憶えるほどに聴き慣れてしまった旋律が流れてくる。





”僕たちは限られた時間の中で、何かを成し遂げるんだ”





歌い出しの部分はそんなありきたりな歌詞だった。

正直言うと歌詞のセンスは微妙すぎる。

けれども、すっと耳に馴染む優しいメロディーは、とても心地がいい。

それでいて、どこか切ない気持ちにさせてくれる何かがあった。



『第五十三回南高等学校文化祭テーマソング』をBGMに、各々が与えられた作業をこなしていた。



我が二年A組の出し物は段ボール迷路。

その完成に向けての作業も大詰で、教室の隅には大量の段ボールが置かれていた。



文芸部の部誌も印刷しないといけないが、原稿は出揃ってるし、そっちは明日でいいだろう。

なんせ、文芸部誌を好んで読むのなんて、部員と顧問くらいのものだ。

時々国語教師、っていうのも付け加えておこう。



窓の向こうから降る十一月の陽を浴びて、私はひとつ伸びをした。

校門のそばに植えられているイチョウの木が、黄金色の葉を纏って輝いている。

風に揺られるたびに、イチョウの葉は色を変える。なんて素敵な景色なんだろう。



眠ってしまいそうな暖かさに、ふわぁと欠伸をこぼした。
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