乙女ゲームオタクな私が妹の婚約者と結婚します!
「楠野に帰ろう。月子」

「―――はい」

にじんだ涙をぬぐい、立ち上がると天清さんはなんで泣くの?と言って私の体を抱えて笑った。

「天清さんっ!?おろしてくださいっ!」

「だめー。じゃあ、あとはよろしくー!」

軽く手をあげ、ひらひらっと手を振った。
天清さんは今まで自分を縛っていた場所に別れを告げた。
それと同時に何もかも惜しげなく捨てた。
天清さんが手に入れたのは―――乙女ゲームオタクでしかない私だけ。
よかったの?本当に。
そう思わずにはいられなかったけれど、手から伝わるぬくもりを私は手離せない。
私を選んでくれてありがとう、天清さん―――感謝の気持ちを込めて、天清さんの頬にキスをした。

「そこは唇にしてよ、月子」

まだそれは恥ずかしいですと言う前に天清さんが唇を奪った。

「これが俺にとっては最高のご褒美だよ。この先、何度でもしてもらうから覚悟しておいてよ」

覚えておいてねと私にささやいた。
つまり、なにかあれば、私からキスをするということ?
いつの間にそんな契約が!?
策士な天清さんは健在で私からのキスを永遠に契約したのだった―――
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