乙女ゲームオタクな私が妹の婚約者と結婚します!
私の頭の中じゃ主審が『アウトぉぉぉっ!!』って力強く言っていた。
それもツーアウト満塁、ホームベースにスライディングしたけど間に合わず的なアウト。
天清さんの中ではギリギリセーフでも私の中ではギリギリアウトですよっ!

「心を開いてくれたかと思ったのに」

「……それとこれとは別です」

「俺の事、嫌い?」

策士―――この人は要注意だ。
昨日、今日と一緒に過ごしてみてわかった。
『破天荒な策士』
『無邪気な顔をして悪どい』
キャラの立ち絵のようにキャッチフレーズが天清さんの横に並んで見えた。

「その手には乗りません」

乙女ゲームで培った勘は伊達じゃない。
そこで私が『嫌いじゃないですけど』で始まり、いいようにされるパターン!!
そうはいかない。

「では、おやすみなさい」

すすすっと押入れの戸を閉めると、押し入れ前から天清さんの声がした。

「寝るのはこれを見てからにしたらどうかなぁ。月子が喜ぶかと思って手に入れた特別な物を持ってるんだけど」

「え?私が喜ぶもの?」

押入れの戸をほんの少しだけ開けた。

「……目しか見えないよ?月子」

「ブツを見せてもらいましょうか」
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