Kiss Me Kitty! ~年下猫系男子とゆる甘アパート生活~
(それにしても、ここは静かだなぁ)
つぼみ荘は古い木造の一軒家の中に鍵つきの個室が四部屋あり、それぞれに住人がいるタイプの賃貸である。
現在、比菜子の向かいは空き室、奥の二部屋はどちらも大学院生が終電を逃した場合のセカンドハウスとして利用しているため、比菜子以外はほぼ不在なのだ。
しかし、この日は違った。
建物の玄関を開ける音がし、誰かが狭い廊下を歩いてくる。
奥の大学院生かと思い聞き耳を立てるが、足音は比菜子の部屋の前で止まった。
(誰だろう? 大家のおばちゃんかな)
ついに〝ビーーーー〟というこの部屋のブザーのようなチャイムが鳴り響く。
(おばちゃんはいつもチャイムじゃなくて「比菜子ちゃーん」て呼ぶんだけど……。ま、いっか。出よう)
通帳を通勤バッグにしまい、扉へ向かった。
「はいはーい」