Kiss Me Kitty! ~年下猫系男子とゆる甘アパート生活~
* * *

「比菜子の行きたいところって、ここなのか……?」

のれんの下から灯りの漏れる、古い木造の屋敷を前に、ふたりは並んで立った。

夜の街をくぐり抜けてたどり着いたのは、大通りから少し中道に入ったところにある風呂屋である。
紺ののれんには白い字で『ハイパー銭湯』と力強く書かれている。

(なんだハイパーって……)

「ここすっごくオススメなの! バスタオルを借りてもワンコインで入浴できて、最近改装されたから綺麗だし」

「温泉ってことか……?」

「違う違う。銭湯。ただのお風呂よ。今のアパートはシャワーしかないでしょ? 心身の健康のためにも、たまに湯船にゆっくり浸からなきゃね」

「ふ、風呂……? 俺誘って、風呂? お、お前……」

明らかに引き気味に感じた比菜子は、「しまった」と思い彼の顔を覗き込む。

「ご、ごめん。年寄りくさかったかな」

「いや、そうじゃなくて……カラオケとかより、こっちのがハードル高けぇだろ……」

「嫌だった?」

「嫌じゃねーよ! 行く!」

宣言通り、ツカサにふたり分の利用券を買わせ、中へ入った。
玄関の先はほんの少しのベンチコーナーの先はすぐに男湯と女湯に別れているため、一緒には来たが早々に個人行動になる。

「じゃあ、四十分後にまたここで」

「おう」

手を振り合ってから、ふたりは同時に、別々ののれんをくぐった。
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