籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】

政略結婚だとしても私たちはこうやって愛し合っているのだから何も問題はない、はずだ。

 お互いの気持ちを確認して数日、いつものように秘書課で仕事をしていた。


「北海道の出張、キャンセルになったからチケットの方もキャンセルの手続きよろしく」
「わかりました、どうしてキャンセルに?」
「それよりも重要な会議が入ったんだよ。あースケジューラー飛ばすから確認しておいて」
「わかりました」


 今週金曜日に和穂さんと一緒に北海道に出張に行く予定ではあった。しかし、それがキャンセルになったらしい。急いで宿泊先ホテルのキャンセルと、飛行機チケットのキャンセル手続きをした。

「今日は来客があるんだったな…」

 独り言をつぶやきながらパソコン画面に表示される専務の予定をチェックしていた。
まだ慣れていないこともあり、出張などはほぼ土浦さんが同行している。私もその方がいいから安心している。


「そういえば、この間会った総務部の女性」
「はい?」


 土浦さんが事務作業をしながら私に一瞥もくれずに藤沢千佳の話題を出す。
彼女とは極力関わらないようにしているものの、よく会ってしまうという運のなさを最近はよく発揮している。

 孝太郎と別れたということは聞いていたけれど、次のターゲットが和穂さんなのではという一抹の不安はある。

それに関してはまだ和穂さんに聞いていなかった。
私を大切に思ってくれているのは知っているが、落ちない男はいないといわれている彼女からアタックされたら…―。その不安を彼にぶつけたらまた彼を傷つけてしまう可能性がある。
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