籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
心が読めたら楽なのに、なんて非現実的なことを考えながらどんどん酷くなる雨音を聞きながら歩く。
マンションに到着して部屋着に着替えてからエプロンをしてキッチンに立っていると、

「何か手伝おうか」
「いえ!大丈夫ですよ」

 和穂さんが私の隣に立つ。ちょうど野菜を洗っているところだったが何故かこの場から離れない彼に疑問符が浮かび手を止めた。濡れた手をエプロンで拭う。

「…あの、何かありました?」
「見ていたらいけない?」
「そういうわけではないですけど」

 上目遣いで凛とした佇まいの彼に視線を送る。

しかし、次の瞬間彼の手が私の腰に回る。
一気に引き寄せられ、抵抗する間もなく簡単に私は彼の胸の中に埋まった。

「和穂さん、」
「本当は君に首輪をつけたいくらいだよ。そうでもしなければまた逃げられそうだ」
「…」

 首輪をつけたいというパワーワードに、ドSさを感じながら彼の発した言葉の意味を脳内で咀嚼するが意味が分からなかった。
逃げるということは婚約破棄をするということだろうか。二度も逃げるほどの非常識さは流石に持ち合わせていない。

「そうだ、今夜俺の部屋に来てくれないか」
「和穂さんの部屋に?どうして?」
「どうしても。はすみを独占したいから」
「…っ」

 これがジョークなのか本気なのか彼の表情からは読み取れない。
ストレートな言葉にドキドキしないわけがない。それは和穂さんという男性が誰が見ても魅力的だからだ。
だから決してそれ以上の感情はない、そう思っていた。
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