【完結】余計な愛はいらない。


 彼はオーブントースターからトーストを二枚取り出すと、お皿に乗せて持ってきてくれた。

「美味そうに焼けたぞ」

「あ、ありがとうございます」

「イチゴバターをたっぷり塗ると美味いぞ」

「そうなんですか?」

 彼はイチゴバターの蓋を開けると、スプーンに掬ってそれをトーストにたっぷりと塗りだした。

「え、そんなに……?」
 
「これくらいが美味いんだって」

 と言いながら彼は、熱々のトーストを口いっぱいに頬張りだした。

「美味い。……ほら、杏実も食えよ」

「は、はい。……いただきます」
  
 わたしもトーストにイチゴバターを塗って、それを口にした。

「どうだ? 美味いだろ?」

「……はい。美味しいです」

 初めて食べたけど、すごく美味しい。甘酸っぱいのに濃厚で、コクがある。

「これ俺のオススメだから、覚えておけよ」

「……はい。分かりました」

 この人って……優しい人、なんだな。

「そういえば、あなたの名前聞いてなかった……ですよね?」

 わたしは彼の名前を知らないから、多分聞いていない。……と思う。

「野瀬颯人(のせはやと)」
< 26 / 59 >

この作品をシェア

pagetop