【完結】余計な愛はいらない。


「……分かりました。殴ってください」

 わたしが彼女にそう伝えると、美麗さんは「じゃあ、遠慮なく」と立ち上がって、わたしの前に立った。

「ごめんなさいね、中原さん」

 そしてその言葉の後、わたしの頬にパチーン……!と少しだけ痛みが走った。

「いったっ……」

 美麗さん、結構力強い……。

「あ~スッキリした。……ごめんなさいね、中原さん。痛かったよね?」

「はい。結構……痛かったです」

 わたしは右の頬を少し抑えながら、苦笑いした。

「……でも中原さんは、悪い人じゃなかった」

「え……?」

「こんなに素直な人に好きになってもらえた玲音は、幸せ者だったってことでしょ? もしそうなら、わたしの玲音への愛は足りなかったってことになる。……多分わたしは、あなたのことが少し羨ましかったのかもしれない」

 美麗さんはそう言うと、イスに座り直した。

「……美麗さん」

 わたしは美麗さんが羨ましいと思っていた。だけど美麗さんは、美麗さんなりの苦労があったんだ……。
 夫婦関係に悩んだ結果、美麗さんと玲音は離婚することになってしまったけれど……。
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