【完結】余計な愛はいらない。


「好きっ……」

 幸せを噛み締めて、思わず好きだとつぶやく。
 そしてその後、わたしの体をぎゅっと抱きしめた彼は、その動きを早めていく。

「あぁっ……!」

 その直後、わたしの中で彼の欲望が解き放たれたのだった。
 


「ねえ、気持ち良かった?」

「……ああ」

 行為が終わった後、わたしはスーツに着替える彼の後ろでそう問いかけた。

「奥さんとわたし、どっちが気持ちいい……?」

 嫌味ではないけど、そう聞きたくなった。

「……それは答える必要、ないだろ」

 そして彼はそう言い残し、洗面所へと行ってしまった。
 ふと時計に目をやると、時刻は21時半を回っていた。

「……帰りたく、ないな」

 いつもそう思ってしまう。 これもわたしのわがままだけど、本当に帰りたくない。
 出来ればずっと、一緒にいたい。 一緒にいたいのに、それは出来ない。
 
「杏実、帰るぞ」

「……帰りたくない」

「杏実、送ってくから」

 送ってくからなんて、そんな優しい言葉はいらない。
 私がほしいのは、そんな言葉じゃない……。
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