僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
そんな事を素で聞いてしまう自分は、本当に意地が悪いと思う。
誰だって、過去の痛みなんか、人に話したくはないだろうに。
「まあ、祐ちゃんには悪いけど、”満たしてくれる彼氏”なんてすぐ別れたね。元々、家庭を持ってる人だったんだ」
「…そうだったんだ」
「その後も、何人かセフレみたいな恋人はできたけど、どれも本気にしてくれなくて―――、祐ちゃんがどれほど大事にしてくれてたのか、痛いほどわかったよ」
「ん、———そう、か」
「うん、でさ!その後ね、なんと、イケメンバンドマンに恋しちゃって!これは大恋愛だとばかりにのめり込んだ末、遊びだった~ていうオチ。それでも、遠くからでもいいから顔見たくてね、こうやって来ちゃったの」
S・kさんはやっぱり【しのはら けい】の略だったんだ。
「その人の事、好きなんだね」
「うん、リュウちゃんはどんなに酷い事されても嫌いになることなんてない。————ってごめんっっ!」
「べつにっ、昔のことだろ?もう気にしてないよ」
「本当に?」
「うん。本当」
嘘だった。
いまでも、心の奥底にしこりが残ってるくせに、プライドが高い俺は気持ちが大きいふりをする。
そのまま半分のろけた思い出話を聞いていた。
へえ、凄いね とか よかったね なんてカラ返事をしながら綺麗な夜空を見上げては、俺はその時期何をしてただろうと思い返して…
ああ、暗い時代だったなぁなんて思い出す。
あそこには、戻りたくないな。
早く二人が待っているマンションに帰りたい。
二人を驚かせるために、連絡なしで帰ってみようかな。
寂しくて、二人が喜んで迎えてくれる顔が見たくてたまらなかった。