僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~

アップルと詩安



ぼーっとしたまま廊下を歩けば、目の前から俺みたいに大荷物を抱えた男の人。

何となく、顔を見て驚いた。


「え・・・紫音?」

一瞬、ベッドに居るのは別人の”しおん”で、こっちが本物の紫音かと思った。

でも、よく見ればこの人は紫音じゃないってわかる。

紫音とこの人は似てるけど目つきがだいぶ違う。
紫音はもっと細いけど、この人はちょっとたれ目になってる。

そんなこと、あるわけないよね…だって、紫音は穂香と…


「あ?なに。紫音の友達?」
「はい・・・・」
「あいついる?」
「いますよ―――」

「そう、じゃあ」

軽く頭を下げて、俺がきた道を進んでいく。
お兄さん・・・だよな?似てるもんな。

・・・あ!いや、違う!
そんなことはどうでもいい!

「あ、あの!いま紫音、いないです。居なかったんですよ」

「は?あんた今いるっていったよな?」


”いった”よな?
”ゆった”よな、の間違いだろ。

書くときは”い”でも、言葉にするときは”ゆ”になるのが普通だろ?

でも、この少しイントネーションがおかしい感じ、間違いない。


「お兄さんですか?」

「そうだけど、何?」


紫音みたいに同じ顔をしているのに、見たことないくらい不審な顔をしていた。

「あの、実は、居るにはいるんですけど、———その・・・」

「…その、なに?」


「さ、最中でっ・・・」



「え・・・・・・マジか・・・」



「はい・・・・・」



「「・・・・・・・」」



男二人、大荷物を携えて廊下で立ち尽くす。


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