僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
「みにゃ~」
大荷物の中には、ペット用のキャリーバックがあって、覗いたら耳がペタッとした猫が一匹入っていた。
「俺うち、来ます?」
「え、いいの?」
「いいですよ。紫音のお兄さんなら、知らない仲でもないですし」
「——超助かる。悪いね」
「いいえ、・・・行きましょう」
***
「散らかってますが、どうぞ」
「いいえ、急にすみません」
俺は、元居たアパートを出るとき、契約は切らずに更新し続けていた。
時々、帰りが遅い時とかここで寝ることもあったし、俺が出張するときにどちらかがここで寝泊まりするからだ。
今回は、ここが使われていないことが分かったけど。
「めし、食いました?」
「あ、食べてない、です」
急に態度がよそよそしくなったお兄さんは、どこか居心地が悪そうだ。
冷蔵庫に何か作り置きがないか確かめる。いつもだったら紫音がそうしてるはずだから。
俺は食べる気にならないけど、お兄さんだったらいいかなって思ったんだけど…。
「あらら…なんもない」
ってことは・・・、だいぶ前からマンションに帰ってたわけだ。
「お構いなく、大丈夫ですから」
「いや、でもこの辺わかります?近くにコンビニとか…」
「あ、ググるんで」
「あ、そうですよね…。じゃ、ごゆっくり」
「え?」
「はい?」
「ここ、家じゃないの?」
「はあ、まあ、家です」
「おれ、雑魚寝でいいから」
「あ、いいですよ。実家あるんで、そっちに帰ります」
「いや、悪いよ」
「いいですって」
終わりそうもない攻防戦。
早くひとりになりたいのに、一筋縄じゃいかないな。