僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
そのまま
実家の近くまできたけど、なんだか母さんに合せる顔がなかった。
そのまま通り過ぎてハルの家へいく。
道路から見える窓には「売家」の文字。
暗く電気が付いてない一軒家の門扉を開けて、庭にまわる。
「ここらへんだったかなぁ?」
ハルが昔飼っていた犬の「モブ」の小屋があったあたりに腰を下ろした。
「ひっでー名前だったよな」
かわいい柴犬のモブ
ありきたりな犬種だってハルがつけた名前。
そのモブが老衰で死んだとき
俺たちは学校も休んで一日中泣いた。
モブがしていた首輪を庭の隅に埋めたんだ。
「何にも持ってきてない、モブ、ごめんな」
手を合わせ、俺はその土を手で掘った。
手じゃなかなか掘れなくて、大きくなった桜の木から落ちた枝を使って少し深めに掘る。
そこに、さっき紫音のマンションから持ってきた水晶付きのミサンガをそこに埋める。
「もったいなくて一度もつけない。ごめんな、ハル」
これを付けていたら、何か変わってたかな?
本当に悪いことをやっつけて俺を聖人にしてくれたかもしれない。
でも、俺はハルに顔向けできる生き方が出来なかった。
お前みたいに真っ直ぐな考え方は俺には出来なかったよ。