僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
俺がいるからって早く帰って来た父さん。
いつかみたいにすき焼きしようって言っていたみたいだ。
「前もこんな風に帰って来た時、晴とすき焼き食ったよな」
「そうだったね・・・」
しんみりという父さんは少し寂しそうだった。
父さん、昔からハルのことを気に入ってたもんな。
何度か、ハルと結婚すればいいのにって言われてきたけど、俺はそれを叶えてあげられなかった。
「父さん」
「ん?」
「あのね、将来を考えている人がいるんだ」
「そうか―――結婚すんのか?」
「うん―――そう約束した」
「どんな人なの?」
「鮫島詩安っていう美容師の男の人――。」
「・・・・・男?———女じゃなくてか?」
「うん、そうだよ。将来を約束して、子供も自然に授かったら産もうって、そこまで話してるよ」
それを聞いた父さんは、苦しそうに顔を歪ませながら、良かったと呟いた。
母さんも、ホッとしたように涙を流す。
「ごめん―――心配だった?」
頷く両親は話せないのか苦笑いをしながら涙を拭いていた。
「———母さんとな、よく言ってたんだ…。祐はきっと苦しんでるよなって―――それで、もしかしたらさ、一生結婚も難しいんじゃないかって」
同調するように母さんも頷いていた。
「ほんと―――よかったわ…。もう、諦めて絶望してるんじゃないかって、心配だったの…。それでね、孫の顔も・・・もしかたらってねって―――話してたのよ」
「———そこまで考えてくれてるって知らなかったよ」
俺が両親にカミングアウトして7年。
長い間この人たちに心配をかけてしまった。
見た目男同士の結婚を反対されると思っていたけど
うちの両親はそんな事よりも俺が将来独身で一生を終えてしまう心配をしてくれていた。
「今度連れて来なさい―――っても、あれか、イタリアなら簡単に帰ってこれないよな」
「まあ、そうなんだけどね。割と話がトントン拍子に進むからさ、そう遠くないかも」
「まあ、二人の決意が固まったらまた報告してくれ」
「うん、わかった」
「——食べようよ、もうそろそろ煮えてきたわよ?」
家族三人で食べるすき焼きは、爺ちゃんや祖母ちゃん――そして晴が居ないから
とても寂しく感じた。
俺がこの家ですき焼きをやる時は、必ずと言っていいほどいた人たちだったから。