僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~

「先輩っ、手ぇ離してください」

俺が変な目で見られるのはいいけど、これじゃあ先輩も一緒に勘違いされる。

「いーじゃん、これくらい」


何も考えてないような返事が返ってくる。

あからさまにジロジロと見る人は居なくとも、俺らの顔と手を一瞬だけ見てくる人はいる。


―――――申し訳ないな。
先輩は、普通の人なのに・・・


そんなこと言ったら「おめーだって人間だろうが」って怒られそうだけどさ。

でも、一緒に冷たい視線にさらさせるのは申し訳ない。



もう、あの子たちに見えないところまで歩いたし、自然に手を離した。


「あ、・・・・んだよ、もう・・・」

ため息ついた先輩は離された手を口を尖らせながら見ていた。



「あ、オールナイトショーだって、入るか?」

でもそうやってコロコロと表情を変える気分屋さん。

俺が頷くと嬉しそうにしていた。


スクリーンでは戦争によって引き裂かれた愛の物語が映し出されていた。
白黒映画や、カラーでも古い時代のもの。

二本目あたりから睡魔に襲われて、目を覚ませば先輩も隣で寝ていた。


童顔のあどけない顔に笑いが漏れる。

こういうところに、世の女性は母性をくすぐられるんだろうな。

母性・・・

おれに、そういうのってあるのかな?

気持ちが不安定なおれ。


どこまであって、どこまでがないのかわからない。



少なくとも、目の前で無防備に寝ている先輩は微笑ましく見えるし、カッコいいなとも思える。

でも、だからって恋心を抱くのかって聞かれたら微妙で、さっきの女の子を抱きたいのかって問われると、どちらとも言えない。

「――――――俺は・・・、何者なんだろうな?」

気持ちは男っていうのははっきりしている。

でも、好きになる異性は?
男なのか、女なのか・・・

それともどっちにでも恋する体質なのか・・・


はっきりしない事ばかりで嫌になる。

いいなと思って付き合ってもさ、そんな問題が出てくるから戸惑うんだ。


第一、女の俺はどうやって女の子を抱いたらいいの?

世の中にはそういう人らも居るけど、彼女たちはどうやって愛を紡いでいるのだろう?

気持ちが繋がってても、それがうまくいかなかったら嫌われてしまうんだろうか?

凄く魅かれて、俺の身体のことも理解して付き合ってくれてもさ…。

そっちの部分の知識ゼロだから、そのうち気持ちも醒めて、ケイみたいに満たされないからって離れていきそうで怖い。


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