僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~

「おねーっちゃん。「ユウシ」君ね、終わったら必ずその店へと行かせるから。ん~っと、大体早くても19時半くらいになっちゃうけど、大丈夫かな?」

「――ちょ、真鍋さんっ」

「大丈夫です!ありがとうございます!」

真鍋さんの言葉に喜ぶ穂香ちゃんとその友達たち。


俺は何も言えなくなってしまった。




「何してんすか、真鍋さん」

荷物を運びながら文句を言う。

こんなことしたって、後々彼女を悲しませるだけなのに…。

「ん?お節介。だって、可愛いじゃねーか、あの子。お前だって嫌いじゃないだろ?」

「そういう簡単な問題じゃないんですよ。全く・・・俺の気も知らないで」

「俺はお前の心情なんて、これっぽっもわかってないって思うよ。その自覚はある。今だって、可愛い後輩へのお節介でしかない」

「・・・・・・・自覚あるなら、やめて下さいよ、そういうの」

「でもよ、島ぁ?そうやって世界を狭くしてもいいのか?お前は、どんだけ狭い視野の中で生きていこうとしてんだ。そのせまっ苦しい世界でよ、お前は幸せになれんのか?」

「なんすか・・急に」

手元を見ながら聞き返した。

「だってよ、絶対自分から恋しないようにしてるだろ?いくら隠そうとしてても、見えるから、そういう部分」

「・・・・・・」

「なーんとなく、楽しそうにしてる恋人や家族連れを、悲しそうな顔して見てるだろ?———自分から決めつけないでよ、始めてみりゃいーじゃん」

返す言葉がなかった。
俺は確かに、そういう温もりを求めている。

孤独な闇をかき消してくれる存在を欲していたんだ。

「チョーおせっかいな俺がよけいな事してごめんな。———でもよ、最初から諦めるなんて『男が(すた)る』ぜ」



その日の仕事終わり、迷った挙句に俺はル・シエルへと向かっていた。


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