僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
「お付き合いしている方って、いらっしゃい・・・ますか?」
その言葉に、素直に落ち込んだ。
告白されたら断るつもりでいた。
だとしたら、今日みたいに楽しく話せなくなるんだろうって思ったから。
「いや、居ないよ」
告白なら、ちゃんと断わないと・・・
「じゃあ!っっあのっ」
”好きです。付き合ってください”
そう来ると思っていた。
たけど、違った。
俺が想像もしていない言葉が返ってきた。
「お友達に、なって下さい!」
「おともだち?」
お友達って・・・。
もうすでにそういう雰囲気あるのに、今さら?
「はい、わたしこういう文化祭みたいなイベントが大好きで、情報交換できたらなーって」
情報交換・・・すなわち、どんな催し物があるか知らせろって事か
告白に構えていた自分に笑えた。
どれだけモテると思ってたんだ、自分。
「うん、いいよ。じゃあ何か交換しようか?」
「はい」
俺がQRコードを読み取れば、『ほの』と名前がでた。
「ほのって呼ばれているの?」
「はい、友達にはそう呼ばれています」
「そうか。じゃあ、ほのちゃんって呼んでもいい?」
「はい!」
なんだか、あの雰囲気だったらお友達という感じではなかった気がする。
もしかして、断れないようにと考えた末の策だったのかも知れない。
でも、そんなことは知らないフリをしようと決めた。
何よりも、彼女ともっといろんな所へ行ってみたかったし、自分のことを打ち明けなくてもいいことにも安心していた。
名前だって”祐子”ってのを”ユウシ”って読み間違えてたけど、それを訂正するのも惜しい気がしていたんだ。
友達としてならば、深いところまで関わらないだろうし、楽しく彼女と定期的に会えるのなら。
そう思って、自分の性についての告白はせずに、イベント愛好家同士としての付き合いが始まったんだ。