僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
「ユウシさんは、時々悲しそうな顔をしますね」
俺は、心情が顔に出てしまう。
知り合って二ヵ月。
毎週のように逢ってるほのちゃんにまで見抜かれてる。
「元気のない時はね、こうやって手を温めると、少し安心するんですよ?知ってました?」
俺より少しだけ背の小さい彼女は、小さな手で俺の手を包んでくれる。
凄く嬉しいんだけど、冬が近づくとともに、彼女の行動は友達以上のものになってきたのを感じてた。
「ユウシさんの手って、ごつごつしてなくて綺麗ですね」
”うん、女だからね”
この子に向かってやっぱりこの一言は言えなかった。
言ってしまったら、このぬくもりが離れてしまうと思った。
「あらら?悲しい顔が消えませんね?」
そうやって向けてくれる笑顔も消えそうで怖かったんだ。
俺は、本当のことを隠し続けていた。
彼女越しに見えていた黒かった夜空に、新年を告げる花火が打ち上げられた。
寒い冬は空気が澄んでて、色がきれいに出る。
「綺麗ですね~」
言いながら彼女の唇が寒くて震えてるのが分かった。
その唇に自分のを重ねて温めてあげたいと思うけど、実行する勇気はない。
「ほんとだ、きれーだな」
後ろから包み込んで温めてあげたいけど、それを俺からするのはズルいと思った。
でも、いつの日か抱きしめてって彼女に言わせるのもズルような気がする。
そんなモヤモヤも付きまとってる時点で、この子は俺の中で特別になりかけてるって気づいたけど、俺はやっぱり自分から終わらせることなんて出来ない。
二人でつないだ手を俺のアウターのポケットに入れた。
「寒いんだろ?これで少しマシになる?」
「うん!暖かいよ。モコモコだしね」
二人で笑顔になる。
俺の手が小さくてよかった。
手を握った状態でも、ちょうどすっぽり入るから。
小さなことだけど、いいこともある。
いまはなにも考えたくない。
目の前にある温かいものだけを、感じていたかった。