僕らの恋愛事情【完】 ～S・S更新中～

おれ、帰った方がいいよな？


そんな自己否定な考えが頭にチラつけば、穂香が俺に気づいてこっちだよって手を振っていた。

また顔に出てたんだろうな。
どうしたの？って心配そうに駆け寄ってきて、手を握ってくれる。

繋いでくれるその手は、やっぱり暖かくて安心する。


そのまま手を引かれて紫音先輩のとこに行けば、俺の顔を見ては冷笑を浮かべ、そのまま視線を落として繋いでいる手を見ていた。

「座れば？」

なんとなく、言い方が冷たい。

”邪魔なんだよ、察して帰れよな”
そうやって、目で言われてる気がした。

「ユウシ君、座ろ？」

促されたのは、紫音先輩と彼女の間。

いや・・・ここはちょっと…。

遠慮して紫音先輩からひとつ離れた席にした。


不安そうな眼を浮かべる穂香に、満足そうな笑みを浮かべる先輩。


「今ね、あの人みてたの」
「あの人？がどうかしたの？」
「なんかね、知り合いっぽいのに、確信が持てなくてウロウロしてるの」
「・・・ほんとだな」

俺はそれっきり口を開くことがなく、アイスコーヒーを飲むことに集中していた。

そんな俺をよそに、楽しそうな二人の会話が続いて、何してんだろ？ってなった。

居心地が悪くなった俺は、ハイチェアから腰を浮かして猿芝居を打つことにした。

「あ、やべ！俺これからバイト入ってんの忘れてた」
わざとらしいかな？

「えー今日は非番じゃなかったの？」

「昨日寝る前にインフルにかかって、一人足りないから来てって言われてたの忘れてた」

「えー、ユウシ君が帰るならほのも帰る」

それを聞いた紫音先輩が、つまらなそうに肩を落としたのが視界の隅に見えた。

やっぱりそういうことか。