僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
「今晩すき焼きだって、食べにくれば?」
「・・・ん、来る」
「何持ってきたの?その袋」
さっきから気になっていた、ビニール袋を指さす。
無言で差し出してくるから、ベッドから起き上がってそれを受け取った。
「あっはは、すごい」
その中には、晴と二人でハマった漫画本が入っていた。
小学生のころ、お小遣いを節約するために、一巻ずつ交代で買っていた。
だから、俺の本棚にあるこの漫画は一巻ずつ飛んでる。
俺たちが子供のころに始まった連載が、今も続いているんだ。
「お前が居なくなってから二年分買っといた。感謝しろよ」
「偉そうに言うなよ。中学から買わなくなって、こっちをあてにして、入り浸ってたくせに」
早速その本を取り出して読もうと思ったのに、手から奪い取られた。
「ちょ、なにすんだよ」
そのまま俺に届かないように、腕をいっぱいにして上に伸ばしてる。
もともとハルのほうが大きかったけど、更に身長差が増えてジャンプしても届かない。
そんな俺を面白そうに見ていたハルは、その本を後ろに落として急に正面から抱き着いてきた。
誰もいない家の中はシーンとしていて、音がない。
外から聞こえるバイクや車が通る音以外は、静かな空間の中で晴に抱きしめられていた。
「ハル?」
「・・・・・」
「ごめんな?」
「・・・・・・」
何も答えてはくれなくて、ただ俺のことを抱きしめてた。
泣いてるんだろうか?
鼻をすする音が聞こえる。