僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
「ハルは、よく来てたの?」

何となく、キッチンにいる母さんに気づかれないように声を潜めた。
父さんも同じく、声を小さくする。

仕切りはなくとも、距離があるから聞こえないと思うけど、聞かせたくないのだろう。


「ああ、よく来ていたよ。母さんも落ち込んでいたし」

「そう」

「お前に、ばあさんに会いに行かないほうがいいって、言っちまったから、帰ってこなくなったんじゃないかって」

「そういう訳じゃ、ないけどさ」

「バイトしてるから、忙しいんだろって宥めてたけどな。どこかで自分を責めていたのかもな」

「まあ、帰りずらかったのは、あるかも・・知れない」


お互い、気まずくなったのは確かだし、俺は両親を世間から白い目で見られるのが嫌っだった。

そんなの、可哀そうすぎると思ったから。


「なあ、祐子?」
「うん?」

「父さんも母さんも、あれから混乱してお前に何もいえなかったけどさ、この二年よく考えたよ。

―――――要するにさ、お前が幸せだったらそれでいいって思えたんだ。——将来の事とか、まあそのなんだ、『結婚』とかか?———色んな不安もあるし、厳しい試練が待ち受けると思って心配になるけど………、お前が胸張って元気に過ごせたら、それでいいんじゃないかって思えてきたんだ」

そう言ってくれて、凄く嬉しかった。

「うん、ありがとう」

「まあ、今伝えたかったのはそれだけだ。ちょくちょく帰ってこい、世の中そんなに甘くねーって説教もしたいから」

「それは、いやかな」


一方的に否定するわけじゃなく、ちゃんとこっちの心情も考慮してくれた

やっぱりうちの親は自慢の両親だ。



「祐子―?そろそろ晴君に伝えてー。準備できたよーって」
「うん、わかった」

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