僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
「腹減った、帰ろう?」
「もう一回」
「まだぁ?」
ここ一時間ぐらいここに座りこんで、丸いスティックやボタンを連打している。
ふた昔前のレトロなゲームに夢中になってるハルの背中は、昔と比べて随分と大きくなった。
ハル、よくこのゲームしてたよな。
随分とこれが好きなんだなって、あの頃思ってたけど、違ったんだよな。
ハルはただ家に帰りたくないだけだったんだ。
両親が喧嘩してるの見たくないって
こればっかしてたのは、勝ち続けたらお金を使うことなく長時間遊べるからだ。
そんな両親は別れてはいないけど、それは今でも継続しているらしい。
だから、お前んちはいいよなってよく言われた。
自分の家よりも、居やすいって。
「ただいまー」
「おかえりー。あら、ハル君は?一緒じゃなかったの?」
「うん、後で来るって」
「じゃあ、食べごろになったら知らせてね」
「うん」
リビングに目を向けたら、二年前とあまり容姿が変わらない人がいた。
けど、少しだけ白髪が濃くなった気がする。
「おかえり」
「うん、ただいま」
その日の夜、久々に父さんに会った。
「ごめんなさい、長い間、顔も出さずに」
「いや、いいんだ。忙しかったんだろう?」
理由は忙しいだけじゃないから、なんだか罪悪感が沸く。
俺のそんな気持ちなんてまるで関係のないことのように、笑顔を見せてきた。
「なんだ、母さんから聞いた話だと、すっかり男みたいになったって言ってたのに、あまり変わらないじゃないか」
「うん、最近はこれからに備えてね、ちょっとおさえてる」
「そうか・・・・。父さん、今日は息子に会うような気持だったのに」
「っはは、そうか。ありがとう」
「ばあさんがな、見舞いに行くたびに、『祐はどうした』って」
「うん、さっきハルとね、会ってきた」
「そうか、ハルが」
「うん」