僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
―――無自覚?なんの話?
なんか、俺が悪いような言い方じゃない?
なんで・・・おれ?悪くないよね?
「まっ、ユウはそこが、めんこい、んだけどさ」
「めんこいって、」
「国の言葉。可愛いってこと」
「国って・・神奈川じゃないでしたっけ?」
「家はね。気持ちは北海道。母ちゃんの実家」
あ、また脱線した。話、すり替えたな。
「ほのの話してるのに、逃げないでくださいよ」
「なんで、そんなにムキになるんだよ」
なんでって…それは—―――
「ともだち、ですから」
「…………………………」
間違ったことは言っていない。
ほのは確かに「お友達」になって下さいと言った。
去年あの喫茶店でそう言われたんだ。
それ以上の関係になれたらなんて、思うのは俺だけで…
穂香にとってはそれ以下でも、それ以上でもないはず。
ただ、体が完璧に『男』だったら、
あの日たぶん俺は穂香を慰めてホテルまで連れ出して、俺のものになれって願いながら抱いていたかもしれないけど…。
「友達ねぇ…」
俺は怒ってるのに、楽しそうに詰め寄ってくる先輩。
ここが居酒屋の個室だから、周りの目がない分、紫音先輩の行動が大胆だ。
可笑しそうに笑ってる口元と比例して、目に怒りの色が見え隠れする。
その目が怖い。
俺の戸惑いや怯みなんかも見逃さないってくらいの強さで、並んで座っていた俺はあっけなく壁まで追いやられる。
またいつものように向かい合うべき席で、なんで先輩はわざわざ隣に座ってくるんだろうって、考えたえていたら、体の隙間はほとんどないくらいに密着してて、顔が5センチ先にあった。
離れなきゃって思うのに、後ろは壁で逃げ場がなくて、
何より、何をも許してくれなそうな、その強い目力に射られたままだった。