僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~

「効率わるいな、ほんと」
「す、すみませんっっ」
「ああ!違うよ!君たちの事じゃないから!頑張ろうな!」

落ち込んでしまいそうな子たちに、必要以上に明るく振舞って誤解を解いていった。

でも、それが更に追いつめているようで、いたたまれなくなり、他の人に任せてその場を離れる。


そんな自分に反省しながら、あちこちに不備がないか、見回っている時だった。

もうそろそろ、楽屋の灰皿がいっぱいになって、ウォーターサーバーが空になってたり、ゴミ箱は弁当のカラであふれているだろうなと想像したときだった。

奥にある、個室の楽屋のドアが少しだけ開いてて、中の会話が聞こえてきたのは。


「んっとに、頼むよ。電話に出ないんだもん」
「”けい”が寂しがって放してくんねーから、わりぃな」

その、”けい”って名前に反応して動けなくなった。
まさかな、ケイなんて名前はどこにでもいるよな。
そう思うけど、聞き耳を立てることをやめられない。

「昼からここに入るって言ってただろ?」
「そんなの知らねーよ、第一、なんでこんなに対バンいるんだよ。それすら知らねーし」

その会話を聞けば、今日はこのバンドがメジャーデビューが決まったことを、サプライズで知らせるイベントだったみたいだ。

俺も初めて知ったんですけど・・・?
それで、かねてからの盟友たちを集めて、発表するって筋書らしい。

でもさ、スタッフである俺たちにその情報が伝わってないってどうなの?

随分と雑な仕事をする事務所だな。
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