エリート弁護士は契約妻と愛を交わすまで諦めない
カード式は初めてだからちゃんと掛けられるだろうか。昨日、出かける時に朔から簡単に説明は聞いたけど……。まぁできなかったら出かけるのやめたらいいか。
鍵の横に置いていたブラックカードはそのままにしておく。好きに使っていいからと言われても使えるわけがない。
でも、そのまま目のつく場所に放置しておくのも気が引けて、考えた末にランチョンマットを持ってきてカードの上に置いた。
これで隠せたかどうか微妙だけれど、存在感のある現物を放置して、なくなっていたら怖い。そもそもこのマンションのセキュリティーは万全みたいだから、泥棒も早々入ってこれないだろうけど、心配性の私の癖だ。
戸締りをチェックしてマンションの部屋を出た。コンシェルジュ付きの高級マンションだからエントランスにスーツ姿の綺麗なお姉さんがいて、目が合うとにこりと会釈された。
おどおどと会釈を返したけど、完全に不審者だ。通報されないかと不安になりながら、大きなガラス戸の自動ドアの先に踏み出す。
マンションのすぐそばが大きな公園で、そこから探索を始める。
「すごくのどか」
遊具は滑り台とジャングルジムが一緒になったものと鉄棒くらいであとは芝生が多い公園。マンション内もそうだけど、この近辺は都心なのに木々があって散歩するだけでも癒される。
九月でまだ暑いものの淡い秋空が頭上天高く広がっている。子犬を連れて散歩する女性や、ランニングしている男性。ここにはゆったりと時間が流れている。誰もがそれを邪魔することもなく、ほどよい距離感で楽しんでいる。
公園の前にコンビニがあって、そこからはお洒落なカフェやブティック、雑貨屋などが並ぶ。スーパーもあって、オーガニック専門店のような品揃えに目を奪われ、値段の高さに息を呑み店を出た。
そろそろ帰ろうかと思ったら、踵を返す前にある看板が目に止まる。
「パン屋さんだ」
お洒落なというより老舗感が漂う店構え。入り口上部に掛けられた黒い看板はクロワッサンの形をしていて、そこに『egao』と白いチョークで書かれている。
ドアには小さな窓がついているけどそれ以外店内を窺えない。
入りにくい。でも、結構人が出ては入ってと繁盛しているようだ。
おいしいのかな。
昼ご飯はその日によって食べたり食べなかったりだ。すべてが胃の調子による。中途半端に食事を抜くのを繰り返すから、以前のような容量を受け付けられない。
< 30 / 107 >

この作品をシェア

pagetop