エリート弁護士は契約妻と愛を交わすまで諦めない
四人で話しながら歩いていくうちに別荘が見えてくる。朔がチャイムが鳴らすと、インターフォンで「どうぞ、お入りください」と女性の声がした。
正門から玄関に行くまでも美しい庭園で、石畳の道が屋敷まで伸びていた。玄関を開けて待つのはお手伝いさん風の老婦人だった。
「ようこそ、おいでくださいました。皆さま、メインホールのほうでご歓談させてます。ご案内いたしますね」
丁寧に一礼されて中へと誘われる。靴は脱がなくていいらしく、ハイヒールのままふかふかの絨毯の上を歩くと足元がぐらぐらする。転ばないよう慎重に歩いて通された先は、メインホールというのも頷ける広い部屋だった。天井がドーム型になっている。しかも、ガラス戸を開放してほとんどの人が芝生で覆われた庭に出ている。ほぼガーデンパーティーだ。
私たちはホールを横切り、庭の中央で囲まれている夫婦に近づく。
夫婦は五十代のすらりとしたふたりで、私たちに気がつくと「これは先生方」と頬を緩める。
「今日はお招きいただきましてありがとうございます。今日は妻も一緒にお邪魔させていただきます」
背の高い朔の後ろに必然的に隠れる形になった私は、紹介に預かりひょこっと前へ踏み出す。
「柚瑠と申します。こちら、お口に合えばいいのですが」
「わざわざありがとう。新婚のところ、貴重な休日を潰させてしまいすみません」
「い、いえ、そんなことありません」
「可愛らしい方ね」
ふたりとも優しい口調なのだけど、値踏みされているような感覚になる。私の被害妄想も入っているのは否定できないにせよ、なんだこいつはと思われるわけにはいかないから、全力で笑みを貼り付けた。すると、旦那さんのほうが手を上げて手招きをする
「玲奈!ご挨拶しなさい」
振り返ってみると、淡いピンクのドレスワンピースを着た女性がこちらにやってくる。
「皆さん、こんにちは」
二十代前半のその人は上品な笑みを浮かべる。
「玲奈、こちらが工藤先生の奥さんだぞ」
旦那さんがわざわざ私を手で示す。その子はまぁと声を上げて、私に一礼した。
「はじめまして。娘の玲奈です」
「今日はお招きありがとうございます」
何食わぬ顔で私も頭を垂れてみるけど、心の中は嵐のように波風が立っていた。
か、可愛いじゃん!すごく!
国民的女優の愛らしさと清楚さがいい具合に混じりあった女性。
私が男なら……縁談勧められたら受けちゃうかも。
性格の相性もあるから、縁談がまとまらない可能性はあるにせよ、持ちかけられて嫌な気はしない。それなのに、朔は取り付く島もないほどすぐ固辞したそうな……。
面食いなのか、それとも自分も整っているからこそ美人に慣れているからなのか。美麗さんも美しいし、きっとオフィスには他にも仕事ができて、美しさも兼ね揃えた人がいるのだろう。それなのに、平凡代表の私を選ぶあたり謎。やはり、幼少からの付き合いがあるからか。
あれ、でもそれなら、美麗さんでもいいんじゃない?
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