エリート弁護士は契約妻と愛を交わすまで諦めない
のんびりと浸かっている場合ではないので、ある程度身体があたたまったら、湯船から立ち上がった。
洗面所のタオル置き場からバスタオルを取って身体に巻きつける。
「あ、服……」
着替えのものがない。どうしよう。
自分の部屋は向かい側だ。こっそり行けなくもない。
早くしないと冗談抜きで朔が風邪引いちゃう。
バスタオルの端をしっかり胸元に織り込んで、意を決して廊下に出た。脱衣所のドアを開けたまま、斜め前に見えるドアに手を伸ばす。
ドアノブに触れた瞬間、バリバリと空気を割く音とともにドンッと地響きがした。
「ぎゃっ!」
雷だ。驚きのあまり潰れた蛙みたいな声が出た。その瞬間、リビングの扉が勢いよく開く。
「大丈夫か!?」
「う……」
朔に返事をしかけたら、ふと足元に白いものが広がっていることに気づく。バスタオルだ。私の身体に巻きつけていたのが、驚いて飛び上がった拍子に落ちたのだ。
朔もリビングのドアを開いた格好で固まっている。私は止まっていた息を勢いよく呑んだ。
「きゃー!!」
さっきよりも大声で叫びながらしゃがみ込む。私の叫び声で朔の硬直が解けて、彼は慌てて背を向ける。
「ご、ごめん!」
「見た!?」
「見てない!見てないから!」
「うそ!朔、嘘吐く時二回言う!」
「えっ……いや!見てないから!早く何か着て!」
朔が後ろ手で扉を閉める。私は目の前のドアを開いて部屋に駆け込んだ。
見られた、見られた!見られた!!
私の裸を朔に!よりにもよって、朔に!いや、朔以外だったらいいわけではなく、朔でよかったのか……もう、混乱してわけがわからない!
「と、とりあえず服を……」
私は適当に目に付いた部屋着を着る。真っ裸からの混乱から少しだけ冷静さを取り戻した。
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