エリート弁護士は契約妻と愛を交わすまで諦めない
……ちゃんと謝ろう。
今朝、不躾な態度だったこと。これからも一緒に暮らしたいこと。
好きと言わなくても感謝は伝えてもいいはず。
貝殻の詰まった瓶に思いを馳せているうちにまたインターフォンが鳴る。慌てて玄関に行き、ドアを開けると里見さんが美しく微笑んでいる。
「突然すみません」
「こちらこそ、わざわざ取りに来ていただいて」
「用事が近くであったものですから」
封筒を渡そうとしたら、手に何も持っていないことに気づく。慌て過ぎて封筒を置き去りにしてきた。
「よ、よろしければ、中へ」
「いいんですか?じゃあ、失礼します」
里見さんはぱぁっと花が咲くように頬を綻ばせる。鈍臭いと嫌がられなくてよかった。
あと、掃除しといてよかった。部屋に上がるかわからないまでも、掃除に精を出して正解だった。
玄関でグレーのコートを脱ぐ里見さん。前のパーティーと違って、髪をきっちり結い上げて黒いスーツを着ている。上着には朔と同じバッジ。でも、変わらない掘りがはっきりした顔立ちにきゅっと上がった愛らしい口元。
シンプルな格好でもキラキラと全身にオーラを纏っている。
朔の想い人があまりにも神々しく、つい目を細めた。
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