エリート弁護士は契約妻と愛を交わすまで諦めない
「……今、京子さんがどう思っているかですよね」
「そう。でも、会社ではそんな話できないし、電話も仕事以外は切られる。これってフラれたってこと?破局ってことだと思う?」
「いや、まだそれはわからないですよ」
「前田さん、それとなく訊いてくれない?『再婚とかしないんですかー?』って」
「わ、私が?」
「一緒に住んでるし、息子の嫁なら気許して、ぽろっと話すかもしれない!」
「いや、それはどうかと……」
「もう、君だけが頼りだ!」
いきなり畳に手をついて頭を下げだすから焦る。個室とはいえ、上司に土下座されて平常心でいられるわけがない。
「か、神崎さん、頭上げてください!」
「タダでとは言わない。料理習いたいんだよね?」
顔を上げたと思ったら突拍子もないことを言う。そりゃ習ったほうがもっとおいしいものを朔に食べさせてあげられるとは思っていたけど……。
「うちの姉、料理研究家の渚マイなんだけど」
「ええ!?ほんとですか」
最近テレビでもたびたび取り上げられる有名人だ。
渚マイの料理は手が凝っているというより、より時短で手軽に作られるか。より多くの料理が難しい行程なく簡単に作れるよう考えられていて、不器用な私でもこれならできそうかなと思わせてくれる。最近、この人のレシピ本を買おうか迷っていたところだ。
「その料理教室とかどう?けっこう人気らしいんだけど、俺から言えばすぐに入れると思う。もちろん、俺が費用とか交通費とか全部払うよ!」
なんて魅力的な話。でも、いいのだろうか。京子さんを売るような形になってしまう気も……。逡巡している私の前で手を合わせて懇願する神崎さんの目が潤んでくる。泣かれるのは嫌だ。
「わ、わかりましたよ」
「ほんとに!?ありがとう!」
神崎さんの瞳が喜色で輝きだす。私はというと、これはまた相当な役目を引き受けてしまったと後悔が半端ない。
「とりあえず、それとなく訊きますけど、無理だったらすみません」
「いいよー、変に思われたら俺に頼まれたって言っていいから。そうしたら、何かしらこっちにアクションしてくるだろうし」
え、それが目的だったりするんじゃ……。
私をダシに京子さんをおびき寄せる作戦にも聞こえてくる。
でも、神崎さんの心中穏やかではない気持ちもわかる。二週間以上も放置されると別れを覚悟するのも無理ない。
京子さんと神崎さんかぁ。
お似合いだけど、朔は賛成するのかなぁ?
普段、京子さんに対してドライだし。かといって、いつまでに出て行けとも騒ぎ立てないから大切にはしていると思う。
だめだ、全く予想がつかない。だからこそ、不安が膨らむ。
神崎さんは上機嫌で、私は気分下降状態で会社に戻った。
「そう。でも、会社ではそんな話できないし、電話も仕事以外は切られる。これってフラれたってこと?破局ってことだと思う?」
「いや、まだそれはわからないですよ」
「前田さん、それとなく訊いてくれない?『再婚とかしないんですかー?』って」
「わ、私が?」
「一緒に住んでるし、息子の嫁なら気許して、ぽろっと話すかもしれない!」
「いや、それはどうかと……」
「もう、君だけが頼りだ!」
いきなり畳に手をついて頭を下げだすから焦る。個室とはいえ、上司に土下座されて平常心でいられるわけがない。
「か、神崎さん、頭上げてください!」
「タダでとは言わない。料理習いたいんだよね?」
顔を上げたと思ったら突拍子もないことを言う。そりゃ習ったほうがもっとおいしいものを朔に食べさせてあげられるとは思っていたけど……。
「うちの姉、料理研究家の渚マイなんだけど」
「ええ!?ほんとですか」
最近テレビでもたびたび取り上げられる有名人だ。
渚マイの料理は手が凝っているというより、より時短で手軽に作られるか。より多くの料理が難しい行程なく簡単に作れるよう考えられていて、不器用な私でもこれならできそうかなと思わせてくれる。最近、この人のレシピ本を買おうか迷っていたところだ。
「その料理教室とかどう?けっこう人気らしいんだけど、俺から言えばすぐに入れると思う。もちろん、俺が費用とか交通費とか全部払うよ!」
なんて魅力的な話。でも、いいのだろうか。京子さんを売るような形になってしまう気も……。逡巡している私の前で手を合わせて懇願する神崎さんの目が潤んでくる。泣かれるのは嫌だ。
「わ、わかりましたよ」
「ほんとに!?ありがとう!」
神崎さんの瞳が喜色で輝きだす。私はというと、これはまた相当な役目を引き受けてしまったと後悔が半端ない。
「とりあえず、それとなく訊きますけど、無理だったらすみません」
「いいよー、変に思われたら俺に頼まれたって言っていいから。そうしたら、何かしらこっちにアクションしてくるだろうし」
え、それが目的だったりするんじゃ……。
私をダシに京子さんをおびき寄せる作戦にも聞こえてくる。
でも、神崎さんの心中穏やかではない気持ちもわかる。二週間以上も放置されると別れを覚悟するのも無理ない。
京子さんと神崎さんかぁ。
お似合いだけど、朔は賛成するのかなぁ?
普段、京子さんに対してドライだし。かといって、いつまでに出て行けとも騒ぎ立てないから大切にはしていると思う。
だめだ、全く予想がつかない。だからこそ、不安が膨らむ。
神崎さんは上機嫌で、私は気分下降状態で会社に戻った。