客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜

「……匠と再会したのはその頃だった。彼は私を好きだって言ってくれたし、きっと私を満たしてくれる……ううん、この埋まらない心を満たして欲しい……そう思ったの」
「……満たされましたか?」
「……性欲はね。この間匠が言ってたでしょ、言わされたって。確かに言わせてたかもしれない。主人の代わりに、私を愛するように強要したの」

 二葉の腕の中で、真梨子の声は徐々に小さくなっていく。

「……愛が欲しかった。孤独だった。子どもがいないならせめて夫から……でもそれもなくなって……だから匠に愛を強要した……最初から愛なんかなかったのに、彼の優しさを利用したのよ」

 どうしてこの人は孤独なの? こんなに苦しんでいるのに、そばで彼女の想いを理解してあげなきゃいけない人は、一体何をしているの?
< 112 / 192 >

この作品をシェア

pagetop