客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
「……でも本当はちょっとだけ、真梨子さんに届いて欲しいなって思ってる……」
「それって先生? それとも旦那さん?」
「本音を言えば旦那さん……。真梨子さんには別の選択肢も考えて欲しいから……」
でもそれは口には出せない。だって大事なのは真梨子さんの気持ちだから。
「……二葉らしいな。こんなこと言ったらおかしいけどさ、最近二葉ってばずっと先生のこと考えてたでしょ? ちょっと妬いてたんだよね。もっと俺のこと考えてほしいなってさ」
「えっ、そ、そんなことないよ……?」
「とぼけても無駄だよ」
「……」
「でも二葉は先生に本気でぶつかってくれたんだよね。それは俺には出来ないことだから……すごく嬉しかった」
「……本当?」
「もちろん。だから……先生から連絡が来るといいね。あっ、もちろん二葉に。俺は拒否してるから」
先生に向けられる優しさにちょっと妬いてしまったけど、こういう匠さんだから好きなの。
「うん、ありがとう……大好き、匠さん。もっとぎゅってしてくれる? 実はさっきの、結構ドキドキしちゃったんだよねぇ。今も緊張感が取れない……慣れないことはするもんじゃないね」
すると匠は吹き出す。
「あはは! そうだったの? かなり堂々としてたけど」
「……してません」
匠の腕に抱きしめられ、ようやく二葉は落ち着きを取り戻していく。
「お疲れ様」
そして再び塞がれる唇の甘い感触をもっと感じたくて、二葉はそっと目を伏せる。
後で木之下さんにお礼言わなきゃ……しかしそんな想いも、匠の熱に囚われ一瞬で吹き飛んでしまった。