客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
匠の想い
 匠は会社近くの公園のベンチに座って、ぼんやりと空を眺めていた。最近はイベントのこともあり、毎日が目まぐるしく過ぎていく。今回は二葉の提案もあったため、企画部全体が(せわ)しない。

 毎日楽しそうに仕事に打ち込む二葉を見るのは嬉しかった。だけど二人で会う時間が減り、寂しさを感じていたのも確かだった。

 俺って実はかなり女々しいタイプなのかなぁ……。二葉を好きになればなるほど、そばに置いておかないと不安になるんだ。

 その時誰かが隣にドサッと座る。驚いて横目で見ると、木之下が座っていた。

「元気ないなぁ、副島。どうかしたのか?」
「別に。いつも通りだけど」
「もしかして雲井さんと上手くいってないとか?」
「お生憎様。仲良くやってるよ」
「じゃあ何をそんなに悩んでるわけ?」

 こいつに話すのは癪だったが、誰かに聞いてもらいたいような気もしていた。

「……二葉ってさ、何にでも一生懸命なんだよ」
「それは言えてる。猪突猛進だよな。ってことはお前にもなんじゃないの?」

 木之下の言葉に匠は黙り込む。

「まぁ……たぶん基本はそうなんだ。だけど気になる事があると簡単に俺の前から道を逸らしていなくなる。かと思うと、またすぐ隣にいたりで……」
「戻ってくるなら別にいいじゃん。何が不満なんだ?」
「不満じゃなくて、不安なんだよ……いなくなった瞬間に、ちゃんと帰ってくるか不安になる」
「……お前ってそんなに心配症だったんだ。びっくり」
「雲井って名前……本当に二葉のまんま。ふといなくなったかと思えば、ふっと現れる……」

 独占欲とかじゃないんだ。とにかく心配で仕方ないんだよ。
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