客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
 下を向いた匠を、木之下は不思議そうな目で見る。

「じゃあなんで一緒にいなかったんだ?」
「だって二葉が『旅先での出会いは、旅先で終わらせなきゃ』って言うから……」
「あぁ、一度決めたら折れない頑固なところがあるもんな」

 そうなんだよ、と二人は笑う。

「今聞いてて思ったけど、副島って本当に雲井さんのこと溺愛してるよな」
「……まぁね」
「だけど、だからこそなんだけど、もしかしたら秩父での終わり方がかなり引っかかってるんじゃないか?」
「……どういうこと?」
「引き止めたかったのに、引き止められなかった。雲井さんはどこか掴みどころがないから、また自分の前からいなくなるんじゃないかって不安なのかなって思ってさ」

 匠ははっとする。確かにそうかもしれない。あの日走り去る二葉の背中を見送った映像が、ずっと頭の中から消えないんだ。

 行かないでくれって引き留めればよかった。二葉が降りる前に車を走らせれば良かった。東京に戻った二人がどうなるかなんてわからないじゃないか。それなら二人の未来に賭けてみるのもありだったんじゃないか……考えれば考えるほど、後悔ばかりが溢れてくるんだ。
< 126 / 192 >

この作品をシェア

pagetop