客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜

終わりの瞬間まで

 ホテルに戻ってからの流れは自然だった。エレベーターのドアがしまるなりキスをして、匠が部屋のドアを開けるとすぐにキスが再開される。

 これが最後だと思うと、彼の一つ一つの動作を頭に焼き付けたくなる。素敵な思い出として、ずっと覚えていたいの。

 シャワーも浴びずにベッドに倒れ込む。キスをしながらお気に入りの服を脱がされるのは、これで二回目。本当の私を暴くのが匠さんで良かったと心から思う。私を否定した慎吾は、ただの仮面を剥いだだけ。

 彼の息遣い、キスの感触、優しい声。彼の逞しい腕に抱かれながら一つになる心地良さ。私きっと忘れない。

 二人は一度果ててから、衝動のまま抱き合った自分たちに笑い出す。

「俺って野獣じゃん」
「うふふ、野獣な匠さんも素敵ですけどね」
「またそんなこと言って。とりあえず汗だくだし、お風呂でも入る?」

 匠はベッドから下りると、バスタオルを腰に巻いて浴槽に湯を張りに行く。しかしなかなか戻らない匠が気になり、近くに置いてあったバスローブを着ると、そっと浴室を覗いた。
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