客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
彼って一体何者なのかしら……今だけの関係の私が詮索することじゃないということはわかってる。何も聞かないということが、一番の選択肢なのかもしれない。
「あとさ、神社とお寺の御朱印を一冊にもらってる人を見るとモヤってするんだよ。神様の印に仏様の印を重ねるって……俺からすればオムライスと寿司が一つの皿に載ってるくらいの衝撃……」
「まぁ人それぞれですけどね。私は宮司さんと住職さんの両方に怒られたことがあるので別にしてます。それより、お寺で平然と御朱印をもらう輩が許せませんよ……。御朱印ブームだかなんだか知らないけど、納経の意味がわかってるのかって友人たちを叱って、一緒に般若心経を唱えさせたこともあります」
「うわ〜、もう誰も一緒に来てくれないでしょ?」
「……いいんです。モヤモヤするくらいなら、一人で気持ち良くお参りしますから」
「それは言えてる。だからこうして二人で回れるってすごいよね。お互いのこと何も知らないのに……あっ、でも性癖はわかってきた?」
「……一日じゃそこまでわかりません!」
すると駐車場に車を止めた匠が、ニヤニヤしながら二葉を見ていた。
「じゃあ二日続けてなら……かなり知れるのかな?」
これは何と返すのが正しいのだろうか。まだ今日の予定は決まっていない。昨日母親には結願するまで帰らないとは言ったけど、匠さんと最後まで巡るかはわからなかった。
彼のこの言葉は、今夜も誘われていると受け取っていいの?
「……そうですね。二日続けてならよくわかりそう……でも一回じゃダメですよ? たった二日しかないんだから」
二葉の返事がツボに入ったのか、匠は笑い出す。
「これからお参りなのに、俺たち煩悩まみれだ。馬頭観音様にバリバリ食べてもらいたいくらいだなぁ」
匠は二葉の頭に手を乗せ、優しく撫でる。
「明日はちょっと過酷なお寺が多いから、今日の帰りに服とか調達しようか? スカートであの階段を登るのは辛いと思うし」
最後まで彼と一緒に過ごせると思うだけで、二葉の胸は高鳴る。
「じゃあお願いします」
そして二人は車から降りた。