「私の為に、死んでくれませんか?」 ~君が私にキスしない理由~
そう言って、私の上半身が徐々に下へ倒れる。地面にあった落ち葉たちが体とぶつかり、カサカサと音を立てる。私が横になるのと同じ速度で彼も体を徐々に下ろし、私達はお互いをじっと見つめ合った。

夜空の月、涼しい夜の空気、程よく回るアルコール、そして私を見下ろす、少し赤面した謎のイケメン。ここが外で、私達は今日会ったばかりで…こういうことを思うには、今の雰囲気はあまりにも完璧過ぎた。私はもうよく分からないまま、ただこの人が私に触れるのを待った。そしてー

「…?」

イケメンはなにも言わず、そのまま体を起こし、私の前に立った。え?ぽけーっとしている私をおいて、彼はなにも無かったかのように自分の服をパンパン叩いて整理した。私も体を起こし、その様子を見ていると…彼が言った。

「いつまで座っているつもりか?」

「え…」

「これ以上はしない。『許可』なしには」


意味深な笑みを浮かべ、彼が私の手を引っ張る。うわ、そういうことか…!私は真っ赤になり、今更この状況が恥ずかしくなって目をそらした。その姿が面白いのか、彼がくくっと笑う。そしてゆっくりと口を私の耳元へ運び、低い声で囁いた。

「さあ、どうする?これからは全て、君が決めるんだ」

(ずるい…)

マジでずるい。危ない要素を一つも残そうとしないその態度に腹が立つ。そう思いながらも、心臓の音がうるさい。今のは相手ではなく、自分の方だ。私は真っ赤になったまま、彼の襟をギュッと握った。

これは、きっと酒のせい。そしてこの全てこの人のせいで、私は悪くない。だって記憶を失い、右も左も分からない心寂しい私にこんなふうにしたら、その気になるのは…当たり前のこと。きっとそうだ。

「…一緒に、来ますか?」

私の誘いに、謎の人がニッコリと笑う。とてもうれしそうに見えた。

「喜んで」
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