「私の為に、死んでくれませんか?」 ~君が私にキスしない理由~
男の話に少年は何も言わず、ただ睨むだけだった。私は自分の仕事はもうとっくに忘れ、両手をぐっと握って心の中で叫んだ。お願い、今は一旦そうするって言って。なるべくやつを刺激しないで、言うとおりにして、この場所から離れた後警察に助けを…!しかし、少年は私の希望通りには動いてくれなかった。


「ふ、ふざけるな…」


痛みで声が震えるけど、内容ははっきり聞こえる。少年は男の睨み、声を絞り出した。


「お母さんを…侮辱するな…」

「……」

「親父が亡くなった後も…お母さんは俺にいつも優しくしてくれたんだ。お前なんかと出会わなければ、もっと幸せになったのに…。お母さんは…俺が守る、死んでもお前なんかには…渡さない…!!」


少年が一言一言を発する度、男たちの顔が徐々に歪む。死の恐怖を与えても、この少年から欲しい言葉を得られなかったことが分かり、とても悔しそうに見えた。そして最後、背の高い男がふっ、と声を出して笑った。


「そうか。じゃあ殺してやるから、愛しい母ちゃんを頑張って守れよ」

「…!やめろ…!」

「おい、手伝え。さっさと終わらせるぞ」

「うっす、兄貴」

「やめろ、やめー」


少年の叫びは又封じられてしまった。又殴る音や、蹴る音、悲鳴と笑い声が混ざる中、私はただ目を閉じて今の瞬間が早く終ることを願った。体が震え、心臓がバクバクと激しく動く。殺害の現場を見るより辛いのは、自分は決して何もしてはいけないこと。死神である私が営業対象を助けたりすると、ルール違反として罰が与えられる。だから、ごめんなさい、あなたを助けられない。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいー!
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