俺様石油王に懐かれて秘密の出産したら執着されてまるごと溺愛されちゃいました
顔すらも、思い出せない父は、母と離婚してすぐに交通事故に遭い、亡くなったと、施設の先生から聞かされた。
(……何にも感じない……な…… )
とっくの昔に、両親を思って泣く様な涙も出なくなっていた。
虐待を受けたとか、酷い罵声を浴びた訳でもなかった。
ただ、ただ、存在を無視された。
父と母にとっては私は、自分達の自由を奪う枷でしかなかった。
お互いが幸せになるために、私を押し付け合う。 どちらからも「要らない」と、捨てられただけ。
無視されるのは、居ないのと同じだと大人になって気がついた事実。
そんな私には両親との思い出らしい思い出もない。
「居ない」
その事実は、父が亡くなったとしても、今迄の生活と何も変わらなかった。
母は再婚し幸せを掴んだ。
施設の先生から、
「お母さん、新しい家族が、出来たんだって。」
そう聞かされた時は、嬉しくて眠れなかった。
(お父さんに兄弟?!…… 妹かな?…… 弟かな……? 楽しみだな…… もう一人じゃないんだ!)
「早くお母さん来てくれないかな…… 」
毎日、外を眺めながら、ウキウキと、母が迎えに来るのを待った。
「…… あんまり期待するなよ」
伊織は私の頭をポンッポンッと、優しく叩くと、複雑そうな顔をする。
伊織の忠告は見事的中、私の願いは見事に砕かれた。
(……なーんだ…… お母さんにとって、私は始めから家族じゃなかったんだ…… 期待してバカみたい…… )
何年経っても、母は、私を迎えには来なかった。
「……捨てられたのか、私は…… 」
小さな胸に、じわじわと黒いシミが滲んでいった。
沢山いる施設の子供達の所には、毎日、誰かの両親が訪ねて来た。
「明日はね、お父さんとお母さんが二人で来るんだよ」
「おばあちゃんも来るんだ!」
「そう、なんだ…… 」
良かったね、頬を引き攣りながら笑うしかなかった。
週末になると、殆どの子達が、両親と面会するので、みんな朝からソワソワして、一番のオシャレ服を着ていた。
「私には、今日も誰も会いに来ない…… 」
その事実が虚しかった。
眉毛をハの字にして、涙を溜めて俯いていると決まって、伊織が側にいてくれた。
「泣くな、バカ! 」
彼にも、訪ねてくる両親は居なかった。