俺様石油王に懐かれて秘密の出産したら執着されてまるごと溺愛されちゃいました
「何を今更、恥ずかしがる。 散々、見ていただろう。 しかも、身体だって一花が、清めてくれていたんだろう?」
揶揄うように言われ、思わず耳までカァーッと熱くなった。
「あれ、は、医療行為、ですから…… 」
恥ずかしくて、小さく呟いた声を拾ったアミールは、
「今だって、医療行為だろ?」
そう言って、男らしい節くれ立った指を、私の髪に絡めた。
後ろで纏めた髪に触れるので、必然的に距離が近くなる。
(きょ、距離感、おかしいくないですか?! )
目覚めてからのアミールは、鳥の雛みたいだ。
生まれて最初に見た人を、親と勘違いする、あの刷り込みなのか、兎に角、何をするにも私にベッタリ。
(何かにつけて、触れられて、ジワジワと距離を詰められてる気がするわ…… )
「あー……、お二人さん、僕がいる事忘れてませんか?」
目を三日月型に細めて、口角を上げ、ニヨニヨと、私達を見つめるカミール。
「悪いけど、僕の手伝いもお願い出来るかな?」
「も、もちろんです!」
慌てて、カミールの側に移動しようと、一歩を踏み出した。
「キャッ?!」
瞬間、手をグイッと引かれて、ギュウゥゥーッと、逞しい腕の中に、引き寄せられた。
「カミールは、明日退院だろ? リハビリを兼ねて、自分でやった方が良い」
「看護師さんも、そう思うだろ?」
と、後ろから腰をガッチリと抱き込まれ、スリスリと、肩に顎を擦り付けられる。
「ふぇっ?」
心臓が、飛び出すんじゃないかと思う程、バクバクとして、上手く息が出来ない。
(もう、無理、無理、無理〜っ! 女性慣れしているアミールには、抱きしめるなんて行為、何ともないでしょうけど、私はもう一杯いっぱいだわ)
リンゴ並みに顔が、赤くなってるのが、自覚出来て、もう倒れそうだ。
「あーヤダヤダ、嫉妬心の強い男は、嫌われるよ」
カミールは、眉を寄せ、呆れる様に苦笑いした。