俺様石油王に懐かれて秘密の出産したら執着されてまるごと溺愛されちゃいました
「一花、チビ達昨日も夜泣き、酷かったのか?」
顔を上げると、作業療法士の、首元がタートルネックのようになっている、丈の短い、半袖の青いケーシーを着た男が、目に入った。
ダークブラウンの髪を、前髪長めにナチュラルに下ろした、マッシュなショートヘア。
私には口角を上げ、口元だけで、胡散臭い微笑みに見える笑顔が、周りからは
「ほっこりとして、人の良さと優しさを醸し出している」
評判の良い男は、高河伊織(こうがいおり)だ。
「最近は、夜の授乳が無くなった分、楽になったんだけど、夢を見るのかな? アルが泣くと、釣られてルルも泣き出すから」
まあ、双子あるあるよ、と笑う。
「辛くなったらいつでも言えよ」
「伊織もね。目、笑ってないよ」
二つ年上の伊織は、私と境遇が似ていた。
そのせいか、よく、私の世話を焼いてくれた。
幼馴染みと言うよりは、一緒の場所で育ち、暮らした仲間。
兄的存在で、何十年と一番近くに居た、身内と言っても良い程、近しい存在。
唯一、心を許して、何でも話せる存在だ。
そんな伊織が、この笑顔をする時は、何か心配事や面倒事があった時、と決まっている。