まどかな氷姫(上)~元妻は、愛する元夫からの愛を拒絶したい~
「かぁわいいな~。ちっこくて、髪ふわふわだし。なんか白っぽいし。綿菓子みてぇ~。しらたまちゃん」
(し、しらたまっ!?)
和菓子を想像したが、すぐに私の名前、白峰珠緒をもじったあだ名だと理解する。
彼はあたかも小動物と触れ合っているかのように、癒されきった顔をしていた。
言っちゃ悪いが、なんともだらしない表情だ。
「あの……」
止めて欲しいと声をかけようとした、その時。
「でっ?!」
ゴンッと威勢のいい音と共に、目の前にあった弛緩した顔が視界から消えた。
何が起こったのかと思い佐々木君の姿を観察する。
彼は自分の後頭部を両手で摩り、涙目になっていた。
その理由は、彼の背後を見てすぐに分かった。
「たまから離れろ」
そこには人一人簡単に殺せそうなくらいの殺気を放って、握りこぶしを携えながら佐々木君を睥睨するまどかがいた。
瞳孔がばっちり開いている。
「こんのバカ!仮にも親友の頭を不意打ちでいきなり殴る奴があるか!!」
目に涙を浮かべて怒鳴る佐々木君に、まどかはどこ吹く風といった様子で顔を背ける。
血がついたシャツのボタンは、既に元通りにしっかりと止められていた。
まどかはそのまま、床に置いてあった自らのバックを開き、中からポケットティッシュを取り出した。
「ほら、たま」
袋から何枚かティッシュを抜き取ると、膝をついて私の方へ差し出してくる。
ペットボトルといい、ハンカチといい、以前も思ったが、彼は相当に女子力が高い。
私はとっくに完敗している。
そして残念ながら、それは前世から変わらない。
「あいやと」
下を向きながら受け取るしかないため、自然と上目遣いでお礼を言ったら、
「…………………」
まどかはぐっと唇を噛み締め、何かを堪えるように目を閉じた。
(?)
もらったティッシュでひとまず鼻をかみながら、不可解なまどかの行動を見守る。