京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

 二ヶ月程前、史織は片思いしていた相手と関係を誤解された事があった。藤本 晃(ふじもとあきら)
 その人には彼女がいたから、史織はその彼女──飯塚 美那(いいづかみな)から一方的に責められる形になってしまったのだ。

『晃にはあなたなんて釣り合わないの!』
 はっきりと言い渡されて、どれほど居た堪れずに恥ずかしい思いをしたか……

 好きだから気になっていたし、意識もしていた。けれど本人には伝わっていなかったと、そう思っていたから。史織にしてみたら、ひっそりと焦がれていただけだった。しかし彼女にはそれすら納得いかなかったらしい。

 美那が随分傷ついたらしく、藤本は慰めるのが大変だったとか。その後二人がぎくしゃくしてしまった時期があったとかで、史織にも非難の目が向けられてしまい、緊張が続いた日々を送った。

 史織にしてみたら、ただ人を好きになっただけ。
 けれどその気持ちが誤解を生み、他者を巻き込み疲弊した事は、まだ記憶に新しい。

 また同じ事が起きたら──

 そう思うと怖くなって、その場から逃げ出してしまった。
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