黒子ちゃんは今日も八重樫君に溺愛されて困ってます〜御曹司バージョン〜
八重樫君が見せてくれた伝票には確かに扉に書かれた番号と同じ番号が書かれていた。

しかも2名様って……

「1人ずつですよね?」

「何言ってんの?」

八重樫君は靴を脱いで入って行く。

「ほらおいで」

繋がれた手は私をペアシートの中に引きずり込もうとする。

脳がフリーズ状態になり、私が動かないでいると八重樫君は私に近づいてきた。

「大丈夫、エロい漫画読んでてもそっとしておいてあげるから」と耳元で囁いき、八重樫君はそのまま私の腰に抱きつき、ペアシートの中に引きずり込んだ。

驚きのあまり声を出すことすらできない私を八重樫君は奥の方に追いやりそのまま扉の前を占拠した。

気が動転して一体何が起きたのか分からないが、ドキドキが止まらない。

土足厳禁だからと八重樫君に靴を脱がされたが、一層私も外に出してくれと思いながら私は靴の行く末を見守っていた。

何度か八重樫君の隙をみて脱出を試みたが、反射神経テスト中かと言わんばかりに私が動くと八重樫君の手が私の手を掴んでくる。

脱出を諦め、隅でじっと体操座りをしていた私に八重樫君はヘッドフォンを付けてきた。

八重樫君がマウスを操作すると、パソコン画面にさっき八重樫君が話していたオススメのコメディー映画が流れてきた。

初っ端から面白い。

私は体操座りをしながら膝の上に顔を乗せ、画面に見入っていると、八重樫君が私の方に近づいて、私のヘッドフォンを外し、耳元で「見える? もっとこっちにおいで」と言った。

襲われるかと思った私は背中を壁に押し付け、硬直し、顔を真っ赤にしてしまった。

ニヤリと笑う八重樫君は何をするでもなく、少し扉の方に移動して、体を丸くし寝転んだ。
八重樫君が何もする気は無いと分かった私は、気持ち真ん中の方に移動して、映画の続きを見ていた。

映画のおかげで緊張がほぐれ、お姉さん座りで足を崩して映画を楽しんでいると中盤当たりで膝のあたりに重さを感じた。

ん?

さっきからゴソゴソと寝心地の良いところを探すように動いていた八重樫君の頭が膝に乗っているではないですか!

そして私を見上げてにっこり笑うとそのまま目を閉じた。

脚をバタつかせてみると今度は向きを変え、私のお腹の方に顔を向け、両腕を私の背中に回してホールドしてきた。

カンカンカン

二条選手ノックダウンです!

そんな実況が聞こえてきそうだ。

八重樫君は、こっちを向いたせいでほぼ母胎にいる体勢になったにも関わらず、すやすやと寝息を立てて寝始めた。

新人類、恐るべし。

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