黒子ちゃんは今日も八重樫君に溺愛されて困ってます〜御曹司バージョン〜
「いや、あれは触れられたというより労いとかそういう類のものでなにも変な意味はないよ」

「そうかな。パソコン見てる時だって後ろから見たら部長が双葉に抱きついてるとしか思えなかったけど。しかも意味ありげに上手いとか素晴らしいとか、今日はもう十分とか」

「いやいや、何もないから。全部仕事のことだから。神に誓って部長は蓮が思っているようなこと一切してないから」

「なにそれ?」

「何って……」

「部長も男だよ」

「あのね、蓮が想像してくれるほど私はモテないんだよ。むしろ、女性として見られるのなんて奇跡に近いんだから。蓮は絶滅危惧種だよ」

「やっぱり分かってない。双葉は気配消すの上手いけど、見るやつから見ればダイヤの原石って分かるんだから」

はっ!  嬉しい!!  ん? でも原石ってことは磨かれてないから、ただの石ころってこと?

本当に今日は褒められているのか貶されているのか分からない1日だ。

「とにかく、部長は50代で子供もいるんだし」

「離婚してたら子供いようがフリーだろ。男は何歳だって若い子に目がないんだからな」

「蓮も若い子がいいの?」

「は? 何でそんな話になるの?」

「……」

分かってる。話が飛んでいることは分かっているけど、ずっと気になっている。

いつか若くて可愛げのある女の子がいいって思うんじゃないかって。

「双葉はもっと自覚持って。俺の彼女だって事、俺以外には黒子に徹する事!」

「黒子って……」

よく分からないが八重樫君はそう言うと私を強く抱きしめた。

これって私が八重樫君を不安にさせちゃったって事かな?

それなら漫画を読み漁った私だから言える一言がある。

「私は蓮が彼氏で嬉しいよ。大好きだよ」

「俺も双葉が大好き」

八重樫君は私の肩に顔を埋めた。

私は八重樫君が大好きなんだ。
言葉にするとその想いは一層強くなっていく。
不安にさせないように私もちゃんと愛情を示すべきなのかもしれない。

終る準備をしながらも私は終わらないようにもがき始めていた。

翌日、目が覚めると八重樫君は休日なのに早くから起きていて、チャットで誰かと話しをしているようだった。
1人で笑ったりしている八重樫君が気になったが、何しているのとは聞けず、コーヒーを入れた。

「蓮もコーヒーいる?」

「あぁ、うん、ありがとう」

八重樫君はスマホに文字を打ち込むのに夢中なようで私の顔も見ずに答えた。
昨日はあんなに嫉妬してくれていたのに、何この変貌ぶり。

私は選択を間違えてしまったのだろうか?
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