黒子ちゃんは今日も八重樫君に溺愛されて困ってます〜御曹司バージョン〜
部長は星羅ちゃんを家に送った後、私を家に送ると言ってきた。

「大丈夫です。車呼ぶんで二条さん送った後にそのまま帰るんで」

「それなら送ってくよ。その方がいいだろう?」

「いや、部長にそこまでされるとなんだか気が引けるので」

「でもなぁ」

「コーヒーカップ回しすぎた俺の責任でもあるんで」

「まぁ、そうだが」

「大丈夫です。俺が責任持って送ります」

「そうか。八重樫君がそこまで言うならお願いするか」

「はい。念のため明日俺が病院に連れて行くんで心配しないでください」

八重樫君は最後に釘も刺していた。

待ち合わせしていた駅につくといつもの車が待っていた。

部長の車を見送ったあと、運転手さんにお礼を言って車に乗り込んだ。

家に帰えると「ごめんね、蓮。ありがとう」と言って玄関で私は八重樫君を抱きしめた。
こんなに頼りになる彼氏がいて私は幸せだ。

八重樫君は私をソファーに座らせて無言でスマホを見て何やらいそいそと動いていた。

あれ? もしかして私は八重樫君を怒らせてしまったのでしょうか? でも一体どのタイミングで?

すると八重樫君は私をお風呂場に連れて行き、まるでお婆ちゃんを介護するかのように服を脱がせ体を洗い始めた。

「あの、自分でできるよ。ありがとう」

「うん」

そう言いながらも八重樫君は私の髪を洗っている。

捻挫は手じゃないからなと思いながらも何が地雷か分からないので八重樫君に身をゆだねた。
今日はシャワーのようで私を洗い終えると「ちょっと待ってて」と言って八重樫君は急いで自分の体を洗っていた。

ムードもなくただただ八重樫君が体を洗う姿を私は座って見ていた。

すると八重樫君はシャワーのお湯を私にかけてきた。

「ちょっ、ちょっと」

「見過ぎ。恥ずかしいから。それにかけといた方が寒くないでしょ」

そう言うとシャワーヘッドを私に渡してきた。
確かにちょっと寒くなりかけていた。

私はお湯を体にかけながら八重樫君が洗い終えるタイミングで八重樫君向かってシャワーをかけた。

お湯がかかって笑っている八重樫君は可愛い。

このシーンも私の大切な想い出だ。

怪我の功名といったところだろうか。

お風呂から上がると八重樫君は丁寧に私の足首に湿布を貼り、包帯を巻いてくれた。

遊園地の救護処置室で丹念に教えてもらっていたのはこのためだったようだ。

私にはできすぎの素敵すぎな彼氏だ。

その夜、八重樫君は私を抱きしめたまま眠りについた。

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