黒子ちゃんは今日も八重樫君に溺愛されて困ってます〜御曹司バージョン〜
それにしてもこんなに優雅な休みは久しぶりだ。

家事を一通り済ませるとやる事がなくなってしまい、ここぞとばかりに漫画を読み始めた。

今日はお料理上手なおじさんのお話。スイーツまで作るおじさんに感化され、次の日私は久しぶりにチーズケーキを作った。これなら八重樫君も食べられるだろう。

仕事から帰ってきた八重樫君に夕ご飯の後、デザートにブルーベリーのジャムを添えたチーズケーキをコーヒーと一緒に出した。

「美味しい。双葉ってやる時はやれるんだな」

「なにそれ? 私を馬鹿にしてる?」

「いや、たまに作ってくれるご飯も普通だし、あ、普通に美味しいよ」

取ってつけたような美味しいだった。
そりゃ八重樫君の手料理や用意してくれる豪華なケータリングには敵わないが、とってつけたような美味しいはあまり嬉しいものではない。

「今日みたいに凝ったやつは作んないし、ケーキなんて作れるとは思ってなかったからさ」と八重樫君は補足した。

確かに面倒くさがりな私の献立はチャチャっとできるがモットーでお菓子作りなんて最近では滅多にしない。

「まぁ、この2日間暇だったからね。こんなので良ければまた作るよ」

「うん。食べたい」

嬉しそうに言ってくれる八重樫君に喜びを感じる。

「足、まだ痛む?」

デザートを食べ終えると八重樫君はそう聞いてきた。

「うーん、ほとんど痛みも違和感も無くなったから明日からは出社しようかなって思ってる」

「そっ、じゃあ」

八重樫君は私にキスをして襲ってきた。

あ、そう言えば最近してなかった。

足のこと気にかけてくれていたんだと私は幸せに浸り、すっかり噂について話す事も忘れていた。

翌日、出社すると状況が悪化しているように思えた。

何がどうとは、はっきり答えることができないが、女の勘と言えばいいだろうか、明らかに何かが違った。

それから1週間、私はこの異様な空気に耐えた。

私が席にいる時にはシーンとしているが、私がいなくなると話し始めていたのか、私が戻ってくるとクスクスと笑いながら仕事に戻りまたシーンと静まり返る。

男性には気が付かれないように気を使いながらの女子独特のこの反応。

これまで私は恋のライバルの土俵にすら上がらなかったからみんなは優しかったのだ。
若くもない残念女が一度に2人の男性と噂になるなんて、いい気分はしないだろう。

1人は完全な誤解だとしても1人は私の我儘でずっと隠している未だに自分でもドッキリじゃないかと思うほど私には勿体ない本物の彼氏だ。

それくらいあり得ない組み合わせである事は理解している。

だから私は黙々と仕事をこなす事だけに集中した。
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