黒子ちゃんは今日も八重樫君に溺愛されて困ってます〜御曹司バージョン〜
「駒田が来たから途中で終わっちゃって黒子ちゃんムスっとしてたらしいじゃん。Wダブルでキッモ」

駒田君、何変な噂を流してくれているんだ。

会議室で部長に抱きしめられた日、駒田君は何も言わなかったのでまさか見られていたとは思いもしなかった。

それにしても尾ヒレがつきすぎている。
私は普通に挨拶しただけで、ムスっとはしていない。

「部長も隠す気なくなってオープンにしちゃうのもダメだよね」

隠す? オープン? どういうこと?

「本当、本当。俺が休日に黒子ちゃんの足首捻挫させてしまった。俺のせいだから黒子ちゃんが休んでいる間のサポートは俺がするって、あれ交際アピールでしょ。キッモ!」

ぶぅっちょーう!! なんて余計な一言をつけるんですか!
交際なんてしていません。むしろ私の相手は。

「ちょっと聞いた?」と言って焦った様子で事務の子がもう1人トイレに入ってきたようだ。

「どうしたの?」

「駒田君が今朝見たらしいんだけど、黒子ちゃん、八重樫君と一緒に出社してきたらしいよ」

「は? なにそれ?」

「私もわからないんだけどさ」

「ちょっと駒田に事情聴取」

まっ待って!! 

駒田君のせいで何かまたややこしくなってきている。

勇気を出して扉を開けたが、すでにみんなはいなくなっていた。
今朝の違和感の意味が分かった。

駒田君、本当に君は何をしでかしてくれているのですか!

私は席に戻ったが、事情聴取中なのか事務の子たちは誰一人いなかった。

「二条君大丈夫か? 足、まだ痛むか?」

部長が心配して声をかけにきてくれた。

「大丈夫です。部長、ちょっといいですか?」

私は部長を会議室に呼び出した。

「私達の噂をご存知ですか?」

「噂? 噂ってどんな」

部長の耳には入っていないらしい。あまりここでかき乱すわけにはいかない。

「いえ、それであれば大丈夫です。噂なんて暫くしたら忘れられるものなのでそっとしておきましょう。早速本題なのですが」

私は仕事の話をした。

今詰める必要のない案件だが、噂の件で呼び出したと思われるとそれはそれで面倒だ。
一通り確認を終えて会議室から戻ると事務の子は戻ってきていて横目でチラリと私達を見ていた。

あまり2人きりにならない方が良さそうだ。
八重樫君には早めに相談しなければ。

私は数日休める程度に仕事をまとめて帰宅した。
家で八重樫君を待っていたが八重樫君はその日帰りが遅く、疲れ果てた八重樫君を見ていると相談するのは今日じゃなくてもいいかと思って話をしなかった。

それから数日私は会社を休むことにした。

そうでもしないと八重樫君は私と出社すると言ってくるし、また一緒に出社すれば噂は更にエスカレートするだろう。
それに有給休暇は十分に余っている。
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