御曹司社長はイケメンで甘すぎです。

「あ…あの…颯真さん…なぜ私に、こんなに良くしてくださるのですか?…」

「それは…偽装恋人だしな…」

「…では…颯真さんは、なぜ偽装恋人が必要なのですか?…私には颯真さんの世界のことは、分かりませんが、小説とかでは、政略結婚をさせられそうとか…許嫁がいらっしゃるとか…よくありますよね。それを断るための偽装なのでしょうか?」


颯真さんは、少し沈黙した後、静かに話し始めた。


「結愛に嘘はつけないな…」

「…っえ?」


颯真さんは照れたように口元を手で押さえた。


「…偽装と言ったのは、嘘なんだ…そう言わないと結愛は、いきなり恋人になんて、なってはくれないだろ…」

「それは…どういう事でしょうか?」


颯真さんは、諦めたように溜息をついて、話を始めた。


「モルディブで初めて結愛に会った時、俺はまさに政略結婚のための、顔合わせの日だったんだよ。結婚なんて、どうでも良いと思っていたのだが、そこで幸せそうな結婚式に出会ったんだ。その様子を見ていたら、なんだか自分の人生が虚しく感じてしまったよ…俺の人生は、会社が便利に使える、道具でしかないのだと気づいたんだ。」

「…それは、私の友人の結婚式ですね。だから、あのとき颯真さんは悲しそうな顔をしていたのですね…」

「…あぁ、その通りだよ。そこにお前が現れたんだ。俺の気持ちなんて、誰も気づきもしないのに、初対面の結愛に見破られるとは、驚いたよ。」

「…お会いになった女性と、結婚するのですか?」

「…結愛に会って、気が付いたんだ。政略結婚なんて俺はしない。結婚相手は俺が自分で決めるとね…俺は日本に戻り、結愛…お前を探したんだ。」


「…では、プレゼンで御社に伺った時、颯真さんが同席したのは、偶然ではないのですね。」


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